貧乏とベネツィア-世界一周記その①

はじめまして。道塾PRスタッフの小野美由紀です。

ここでは、私が世界一周一人旅に出た時のエピソードを書いてゆこうと思います。

大学3年のとき、

バイトで稼いだ100万円を預金口座に放り込み、

世界一周の旅に出た。

100万というと、

え?そんな大金!と思う人もいるかもしれないけど、

世界一周するのにはギリギリの額。

“1日1000円で生活する”を目標に、

さっそく最初の国、インドから節約生活が始まった。

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※インドの聖地、バラナシ。ガンジス河は人々の生活の場

泊まった最安の宿は140円。

一日2食、現地人と同じ屋台で飯を食べ、

ボロボロのバスに乗って旅する。

物価の安い中央アジア、中東を抜けてアフリカ大陸へ。

それでも、エジプトまではよかったが、

船に乗り、エーゲ海の向こう、ギリシャに渡ったあたりから急に行き詰まった。

ヨーロッパの物価はなんせ、凶暴なまでに高い(当時、167円=1ユーロ)。

スーパーに行っても、買えるのは冷凍のオクラだけ。

入場料の高い観光地は入れないから、

タダで入れる教会とか、庭園ばかり行って、

日がな一日、ボーっとするのが日課になった。

少しでも宿代を節約するために、

24時間営業している空港にわざわざ行って、寝たりした。

それでも、旅が続けば財布はどんどん軽くなり、いよいよ困窮はじめる。

貧乏がもっとも極まったのは、イタリアのヴェネツィアだった。

ヴェネツィアは、中世にヴェネツィア共和国の首都として栄えた都市。

(世界史の人ならわかるよね?)

ジョジョ5部の舞台にもなった、

街中を運河が網目のように走る、「水の都」だ。

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※ ヴェネツィアの夕暮れ

ちょうど夏の観光シーズン。

街の安宿はすべて、先客で埋め尽くされていた。

高いホテルにはどうやったって泊まれない。

窮して、出した策は、

「ヴェネツィアの鉄道駅で寝ること」だった。

・・・女子なのに・・・。

行ってみると、自分と同じような境遇のバックパッカーがたくさんいて安心した。

それでも1時を過ぎると鉄道駅は閉まる。

駅のシャッターが下ろされると、

大勢のバックパッカーが一様に、駅の前に横一列に並んで寝始めた。

まるで漁港でおろされたマグロ状態。

しかたがないので、隣のバックパッカーにダンボールをもらってその上に寝た。

夏とは言え、夜は肌寒いし、 周りがうるさいので眠れない。

日が昇るまで、する事が無いので、

一人でヴェネツィアの街をひたすら、歩き回ることにした。

寝静まる街は真っ暗で、

人っ子一人いない。

物音もしない。

本当の孤独。 お腹は死ぬほど空いていて、

いよいよ寒さ、寂しさが煽られる。

なんで私、なんの役にも立たないのに、

こんな無意味で辛い経験してるんだろう?

街を走る運河を、桟橋の上から見つめた。

真っ黒な水面に、

街灯の白い光が反射する。

狭い水路で溢れかえった光が、波に合わせてギラギラと、

魚の横腹のようななまめかしさで暴れ回った。

川面を眺めていると、

溢れる光の渦が、網膜から吸収されて、

体の内側でまばゆく輝くような、

不思議な高揚感を覚えた。

張り巡らされた光の運河が、

毛細血管のように街中を覆い、

ヴェネツィアの街全体が、

まるで光の胎児のような不思議な生命力を持って、

とくとくと鼓動を打ちながら、光を放っていた。

ヴェネツィアに来た人間の95%はおそらく

こんな景色を見ることはないだろう。

じゃあ、

今、この瞬間に、この光景を見ることのできた自分は、

ひょっとしたら

すごい

「大丈夫」

なんじゃないか、

という思いが、

なぜか沸いてきた。

「あると思います!」。

自分で自分にそう言い聞かせたくなる感じ。

全然、根拠も何もないのに、

ものすごい貧乏で、

行き詰ってるのに、

なぜか自分で自分を肯定していた。

こんな経験を積みながら旅するうち、

だんだん芯からしぶとくなっていった。

旅が終わるころには、ちょっとのことでは動じない人間になっていた。

この旅で学んだこと、それは

「苦しい体験は、大きな力を出すためのエネルギーに転化することができる」

ということ。

困窮して、極まった状態を逆転させて生きる糧にする、そんな考え方。

それは受験も一緒だと思う。

受験勉強、つらくて、苦しくて、思い悩む人も多いだろう。

偏差値は思うように上がらず、

あともう少しでセンター試験、という、あの切羽詰った感じ。

自分の今の実力で、果たして受かるかどうか、という、

あの喉をカラカラにするような不安に毎日襲われている人もいるかと思う。

でもその苦しみは、必ず

今後跳躍するためのエネルギーの「溜め」として

自分の中に保存されるはずだ。

受験勉強がもたらす効果は、決して知識の集積だけではない。

行き詰まる経験の中で、それでも辛さに耐え続けていれば、

「ちょっ」との転換装置で、苦しさをそのまま爆発的な力に変えることができる、

そんな心の筋力を身につけることができる。

苦しい経験を、エネルギーに転換する、

合気道のように、

外から来た圧力に負けず、するりとそれを自分の力に転換してしまう、

そんなしなやかな筋力を、今、苦しい中で鍛えておければ、無敵だと思う。

それが、受験勉強のひとつの効力なんだと思う。

行き詰るだけ、行き詰ればいい。

苦しんだだけ、

その経験はあなたの生きるための筋力になるから。

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※スペインの山頂、標高2300mからの日の出。

小野美由紀

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